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ケキンシゴケ

Distichium capillaceum   2016/7 南アルプス(静岡県静岡市)

 

ハナガゴケと同定していた標本を見直していたら、一つだけ見慣れないコケの標本が見つかりました。南アルプスの高山帯で少しだけ採取していたもので、茎に対して葉が2列につくことや、葉身細胞の形などから、ケギボウシゴケのようです。

葉が中肋から折りたたまれるところなどを拡大して見ると、野口図鑑に書いてあるように、エビゴケに似た雰囲気もあります。茎葉体全体の雰囲気はむしろシッポゴケの仲間のようにも見えます。

2: 岩陰に、ハナゴケ類などと共に生えていました。

3: 茎は1~3㎝くらいで、分枝はほとんどありません。

 蒴柄は黄色っぽくて平滑、1cmくらい。

4: 葉は明瞭に2列につき、下部は鞘状となって茎を抱いています。

5: 茎の下半分は茶色の仮根で被われています。

6: 蒴は1.5㎜くらいの円筒型で、直立します。蓋は先の丸い円錐型。

7‐8: 口環が発達します。

 蒴歯は0.2mmくらいですが、半分くらいは口環に隠れています。表面は微小なパピラや弱い縦皺があったり、平滑だったり。

9: 胞子は径15μmくらいで、表面は小さなパピラがあります。

10: 葉は2-3mmくらい。

11: 上半分はほとんど葉身部がなく、棒状に見えます。下半分は鞘状になり2つに折りたたまれる。

12: 上部の断面。背腹両面にパピラがあります。

13: 下部の断面。葉鞘部にはパピラはありません。

14: 葉先端部。

15: 上部。

16: 葉鞘上部。15µmくらいの蛆虫状の細胞がみられます。

 写真なしですが、葉鞘下部の細胞は細長い長方形でした。